※本記事は防犯アドバイザーとしての個人的見解です。
【号外】阿部監督逮捕騒動―警察「人身安全関連事案」対応の実情巨人・阿部慎之助前監督の逮捕をめぐり、ネット上では「不当逮捕」「逮捕の必要性はなかった」など、警察を批判する声が相次いでいます。中には「球団による陰謀だ」とまで主張する人もいます。
しかし私は、防犯アドバイザーとして日頃から警察の活動や判断基準を研究する立場から、今回の逮捕判断は決して間違っていなかったと考えています。
逮捕の根拠は2つあった
今回の逮捕には、明確な根拠が2つあります。
1つ目は、成人とは言え18歳の娘を、飲酒した状態の父親が投げ飛ばしたという事実です。相手は屈強なプロ野球選手です。「親子喧嘩の範囲」とは言い切れません。
2つ目は、「人身安全関連事案」に関する警察の対応原則です。この種の事案では「迷ったら積極的に強制捜査」、つまり任意捜査よりも逮捕を優先することがよくあります。現場の警察官が独断で判断したわけではありません。
なぜ逮捕を優先するのか
この原則には、痛ましい歴史的背景があります。
過去に何度も繰り返されてきた失敗があります。「加害者を逮捕しないでほしい」「もうしないと思う」「被害届は出さない」という被害者の言葉を信じて任意捜査にとどめた結果、その日のうちに被害者が殺されるという悲劇が繰り返されてきたのです。
逆に、逮捕して手錠をかけることで、加害者が初めて自分の行為の深刻さに気づき、再犯を防ぐことができた事例は、決して珍しいことではありません。
橋下徹氏の指摘が最も的確だった
数多くの意見の中で、最も正確だと感じたのは橋下徹氏の発言です。
これが今回の事案の本質を突いた見方だと思います。
国会答弁についても誤解がある
国会で警察庁職員が「個別の事案について逮捕理由は答えられない」と回答したことも批判されました。
しかしこれは当然の対応です。1件答えれば、今後すべての事件で捜査の途中経過を説明しなければならなくなります。捜査の秘密保持という観点から、この回答は正しいのです。
本当の問題は何か
私が最も懸念しているのは、今回の騒動の影響で現場の警察官が逮捕判断を躊躇するようになることです。警察官はマスコミに叩かれることを恐れています。今後、現場の警察官が「この逮捕は適切なのか、任意捜査で大丈夫なんじゃないか」と一瞬でも迷い、逮捕のタイミングが遅れた結果、次の被害者が生まれる。それが最も恐ろしいシナリオです。
また「逮捕イコール犯罪確定」という誤った認識も問題です。公務員であれば検察が起訴した時点で初めて失職となります。今回のように逮捕直後に即辞任という判断は、少し早計だったと感じます。
まとめ
今回の事案は「普通の親子喧嘩」ではありません。しかし「逮捕イコール有罪」でもありません。
大切なのは、警察の現場判断の背景にある原則と歴史を正しく理解することです。感情的な警察批判が、次の被害者を生む土壌になることを、防犯の立場から強く懸念しています。
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