第17回・家族・高齢者
高齢の親を守るために子どもができること
―実家の防犯診断・見守り機器・家族ルール―

「親は元気だから大丈夫」「田舎だから狙われない」——そう思っていませんか?
第1回から第16回でお伝えしてきたように、闇バイト型強盗が最も狙うのは「高齢者が一人または二人で暮らす一戸建て」です。離れて暮らす子どもとして、親のために今できることを整理します。
今回は特に、帰省できない日常の中でもできる「遠隔サポート」と、帰省時にできる「10分防犯診断」に絞ってお伝えします。
1.なぜ高齢者の実家が狙われやすいのか

第1回でも触れましたが、改めて整理します。犯罪グループが高齢者の一戸建てを狙う理由には、明確なパターンがあります。
【高齢者の実家が狙われやすい4つの理由】
① 現金を自宅に保管している傾向がある
→ 高齢世代は銀行より自宅保管を好む方が多い
② 特殊詐欺の未遂情報が標的選定に使われる
→ 詐欺電話を断っても「この家に高齢者がいる」という情報が残る
③ 防犯設備が古いままのことが多い
→ 補助錠・センサーライト・録画インターホンが未整備なケースが多い
④ 子どもが遠くに住んでいて、気づきにくい
→ 日常的に家の状態を確認できる人がいない
2.まず「電話で確認」から始める

帰省できなくても、電話一本でできる確認があります。ただし「防犯のために聞いている」と言うと親が構えてしまうことがあります。「元気かな」という日常会話の中で自然に確認するのがコツです。
【電話で確認できること】
・「最近、変な電話はかかってきてない?」(特殊詐欺の把握)
・「知らない人が訪ねてきたりしてない?」(不審者・下見の把握)
・「鍵は毎晩ちゃんとかけてる?」(施錠習慣の確認)
・「夜、一人のときは怖くない?」(心理的な安心感の確認)
会話の中で「何か変なことがあったらすぐ電話して」と伝えておくだけで、親の警戒心と子どもへの信頼感が同時に育ちます。
3.帰省時にできる「10分防犯診断」

帰省したとき、10分あれば実家の防犯状態を大まかに診断できます。以下のチェックリストを使って、親と一緒に確認してみてください。「一緒に確認する」スタイルにすると、親も受け入れやすくなります。
【帰省時・10分防犯診断チェックリスト】
【玄関・入口まわり】
□ 玄関の鍵は補助錠が付いていますか?(1本だけの場合は追加を検討)
□ インターホンは録画機能付きですか?(古い音声のみのものは交換を検討)
□ 玄関内側に「知らない人は開けない」メモが貼ってありますか?
【窓まわり】
□ 1階の窓に補助錠は付いていますか?
□ クレセント錠の周辺に防犯フィルムは貼られていますか?
□ 勝手口・裏口の鍵は毎晩かけていますか?
【外構・照明まわり】
□ 勝手口・裏口にセンサーライトは設置されていますか?
□ 塀・植栽で死角になっている場所はありませんか?
□ 勝手口まわりに防犯砂利は敷かれていますか?
【電話・情報まわり】
□ 電話機は録音・警告機能付きですか?
□ 知らない番号に資産・家族情報を話していませんか?
□ #9110を家族全員が知っていますか?
すべてを一度に解決しようとしなくて大丈夫です。チェックで「×」が付いた項目を1〜2個ずつ改善していくだけで、実家の防犯レベルは着実に上がります。
4.Tapoで実家を遠隔見守り——設置のポイント

第9回でもご紹介したTapoシリーズは、実家の遠隔見守りに使いやすい選択肢のひとつです。子どもがスマートフォンで実家の状況をリアルタイムで確認できます。
【実家へのTapo設置のポイント】
① 設置場所:居間・電話のある部屋・玄関内側が優先
② Wi-Fi設定:帰省時に子どもが代わりに設定してあげる
③ アプリ設定:子ども・兄弟姉妹・信頼できる親戚のスマホに入れておく
④ 動体検知通知:異常な動きがあるとスマホに通知が届くよう設定
⑤ 呼びかけ機能:カメラを通じて「ご飯食べた?」と声をかけられる
「監視」ではなく「見守り」として伝える
【親への伝え方の例】
✕「防犯のためにカメラをつけたい」(親が警戒・拒否しやすい)
○「もし倒れたときにすぐ気づけるようにしたい」
○「離れていても顔が見られると安心できるから」
○「一緒にご飯食べてるみたいで寂しくなくなるよ」
「防犯」より「あなたのことが心配・見守りたい」という言葉の方が、高齢の親には受け入れてもらいやすいです。
4-2.防犯カメラが持つ「もう一つの効用」

防犯カメラには、犯罪抑止・証拠取得という表の効用のほかに、あまり語られない「もう一つの効用」があります。
【防犯カメラが静かに解決してくれること】
① 高齢の親の「気になる発言」を確認できる
→ 独居の高齢者は、時に「物がなくなった」「誰かが入ってきた」と言うことがあります。「そんなはずはない」と思いつつも、完全には否定できない。カメラがあれば、誰にも知られず後から映像を確認できます。親の心配と子どもの不安、両方を静かに解消してくれます。
② 「良かれと思って来てくれる人」への漠然とした不安を確認できる
→ 近所の方が実家に立ち寄ってくれることは、本当にありがたいことです。しかし中には、高齢者の善意につけ込んでお金の無心をする人や、部屋の中を物色する人がいることも、残念ながら現実にあります。「まさかあの人が」と思いながらも「もしかして」という気持ちが残る。こうした悩みは、気軽に警察にも相談しにくいものです。カメラがあれば、人間関係を傷つけることなく事実を確認できます。
「実家にカメラをつけてから、ずっと気が楽になった」——そう感じている方は少なくないはずです。防犯カメラは「犯罪者を映す」だけでなく、「見えない不安を可視化する」道具でもあります。
5.親世代への「防犯話」の切り出し方

防犯の話を親に切り出すとき、「怖がらせる」アプローチは逆効果になることがあります。高齢者は「そんなこと私には関係ない」「大げさに言わないで」と受け流しやすいからです。
| やりがちな伝え方 | 受け取られ方 | おすすめの伝え方 |
|---|---|---|
| 「最近強盗が増えてて危ないから!」 | 怖がる・または「大げさ」と流す | 「近所で変な話聞いた?一緒に確認しよう」 |
| 「この鍵は危ない、すぐ替えて」 | 押しつけに感じる・反発する | 「帰省のお土産に補助錠買ってきた、一緒につけよう」 |
| 「知らない人には絶対ドア開けないで」 | 命令に感じる・忘れる | 「玄関に貼り紙しておくと便利だよ、作ってあげようか」 |
| 「カメラつけていい?」 | 監視されると感じる | 「顔が見られる機器があると私が安心できるから」 |
6.認知症の親への特別な配慮

認知症の症状がある親の場合、防犯の話を覚えてもらうことが難しい場合があります。「話した」だけでは対策になりません。「仕組み」で守ることが重要です。
【認知症の親への防犯——仕組みで守る】
① 玄関内側に「開けないメモ」を貼る
→「知らない人が来ても、絶対に開けないでください」と大きく書いて貼る
② 電話機に「知らない電話には出ない」シールを貼る
→ 録音・警告機能付き電話機への交換も検討する
③ 見守りカメラで子どもが遠隔確認する
→ 本人が覚えていなくても、子どもが異常を察知できる
④ 鍵はドアチェーン・補助錠で「開けにくい」状態にする
→ 本人が開けようとしても手間がかかるようにする
⑤ 民生委員・ケアマネージャーにも防犯への協力を依頼する
→ 地域のネットワークを活かす
まとめ:今日からできること

【今日の確認チェック】
□ 親に「最近、変な電話や訪問者はなかった?」と電話で確認しましたか?
□ 次の帰省時に10分防犯診断をする予定を立てましたか?
□ 見守りカメラ(Tapo等)の導入を検討しましたか?
□ 親への伝え方を「監視」ではなく「見守り・安心」の言葉に変えましたか?
□ 認知症の親がいる場合、「仕組みで守る」対策を検討しましたか?
□ 親の家の玄関内側に「知らない人は開けない」メモを貼りましたか?
次回(第18回)は連載の締めくくりとなる「家族で作る『防犯行動計画』——今日・今週・今月・万一のときの4段階」をお届けします。連載全17回の対策を、実行しやすい4段階の行動計画にまとめます。
参考・引用
※1 警察庁「住まいる防犯110番」https://www.npa.go.jp/safetylife/seianki/bouhan/
※2 政府広報オンライン 高齢者向け防犯特集(2024年版)
※3 首相官邸 特殊詐欺・強盗対策広報
※4 警察庁 特殊詐欺対策広報資料


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