プロが診た「守れていない家」の実態

犯罪を知る

第2回・犯罪を知る

プロが診た「守れていない家」の実態

―大手警備会社と契約済みの豪邸でも侵入される理由―

「大手警備会社と契約しているから安心」——そう思っていませんか?

私がある現場を診断したとき、その考えが根本から崩れました。契約済みの豪邸でも、隣家が侵入被害に遭っていたのです。そして診断してみると、対策の「向き」がまったく違っていました。

今回は、実際の現場診断事例をもとに、プロが知っていて一般の方が知らない「防犯の盲点」をお伝えします。

1.現場診断の概要

【診断した家の概要】

 

・築20年ほどの大きな一戸建て

・70代ご夫婦の二人暮らし(お子さんは独立済み)

・大手警備会社の個人警備システムに契約中

・1階のすべての窓に警備システムのセンサーが設置済み

・掃き出し窓の一部は二重サッシに交換済み

・隣家でも前年末に侵入被害が発生していた

ご主人は「警備会社が来るのは遅い、何かあっても間に合わない」とおっしゃっていました。その懸念は正しく、実際に隣家では侵入されてから警備会社と警察が到着したときには、犯人はすでに逃走していました。

2.診断してわかった「対策の向き違い」

診断に伺うと、すぐに問題点が見えました。対策が「道路側」に集中していたのです。

【発見した問題点】

 

① 道路に面した庭に「常時点灯のライト」が設置されていた

② 道路側の窓はすべて二重窓に交換済みだった

③ しかし道路と反対側(裏側・内庭側)の掃き出し窓は対策なし

④ 内庭になった「外から全く見えない窓」も無対策のままだった

⑤ 防犯フィルムが窓全面に広く貼られていたが、効果的な貼り方ではなかった

私はご主人に言いました。「犯人が狙うのは、この道路側の窓ではありません」と。

隣家の被害も、道路と反対側に回って侵入されたとのことでした。この一言で、ご主人はすべてを理解してくださいました。

3.「常時点灯ライト」の落とし穴

多くの方が「夜は明るくしておけば安全」と思っています。しかし常時点灯のライトは、防犯上は逆効果になる場合があります。

【常時点灯 vs センサーライト】

 

常時点灯の問題点

・犯人が光に「慣れて」しまう

・ずっと明るいため、侵入作業中も「いつもと同じ」状態になる

・むしろ作業しやすい明るさを提供してしまうことがある

 

センサーライトの優位性

・人が近づいたときだけ強烈な光が点灯する

・「気づかれた」という心理的プレッシャーを与える

・周囲に「異常があった」と知らせる効果がある

私のアドバイスは「夜間点けっぱなしではなく、人感センサー付きのものに替えてください」でした。

4.防犯フィルムは「広く貼れば良い」わけではない

この家では防犯フィルムが窓ガラス全面に大きく貼られていました。一見「しっかり対策している」ように見えますが、これは効果的な貼り方ではありません。

【防犯フィルムの正しい目的】

 

防犯フィルムの目的は「ガラスを割れなくすること」ではありません。

 

目的は「侵入に5分以上かけさせること」です。

 

犯人がガラスを割るときは、クレセント錠(三日月形の鍵)に手を届かせるために、鍵の周辺のガラスを割ります。これを「3点割り」といいます。

 

つまり、フィルムを貼るべき場所はクレセント錠を中心とした半径30〜40cmの範囲です。全面に貼る必要はなく、この部分に集中して貼ることが重要です。

ご主人は「なぜクレセント錠の付近にシートを張るのか」がやっと理解できたとおっしゃっていました。プロには当たり前のことでも、一般の方には知られていないことがたくさんあるのです。

5.改善提案の内容

私がその場で提案した改善策は次の5点です。どれも高額な工事は不要で、すぐに取り組めるものばかりです。

優先順位 改善内容 費用感
①最優先 裏側・内庭側の窓ガラスのクレセント錠周辺に防犯フィルムを貼る 数千円〜
②最優先 裏側・内庭側の窓に補助錠を取り付ける 1,000〜3,000円
③早めに 常時点灯ライトを人感センサーライトに交換する 3,000〜1万円
④早めに 道路側から裏側への導線に防犯砂利を敷く 数千円〜
⑤余裕があれば 古いインターホンを録画機能付きに交換する 1〜3万円

高額な設備より、「犯人が狙う場所の対策」を優先することが最も重要です。

6.この事例から学べること

【3つの教訓】

 

「道路側だけ対策」は危ない

→ 犯人は人目のない裏側・内庭側から侵入する

 

「警備会社に入っている=万全」ではない

→ 侵入を「させない」物理対策と組み合わせて初めて効果が出る

 

「高価な設備=安全」ではない

→ 狙われる場所を正確に把握して、そこに集中して対策することが重要

まとめ:今日からできること

【今日の確認チェック】

 

□ 1階の窓で「道路から見えない場所」はどこか把握していますか?

□ センサーライトは「裏側・内庭・勝手口」に設置されていますか?

□ 防犯フィルムはクレセント錠(施錠部)の周辺に集中して貼られていますか?

□ 死角になる窓に補助錠は取り付けられていますか?

□ 道路側から裏側への動線に、防犯砂利などの工夫はありますか?

次回は「空き巣・忍び込み・強盗の違いを知る——犯人は何を考えてターゲットを選ぶのか」をお届けします。犯人の目線から家を見直すことで、対策の優先順位がより明確になります。

参考・引用

※1 警察庁「住まいる防犯110番」https://www.npa.go.jp/safetylife/seianki/bouhan/

※2 国土交通省・警察庁「防犯性能の高い建物部品」普及推進会議(CP部品制度)

※3 政府広報オンライン 防犯特集(2024年版)

※現場事例は個人が特定されないよう、一部内容を変更して掲載しています。

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