第3回・犯罪を知る
空き巣・忍び込み・強盗の違いを知る
―犯人は何を考えてターゲットを選ぶのか―

「うちは普通の家だから狙われない」——そう思っていませんか?
実は、犯人は「豪邸かどうか」よりも「入りやすいかどうか」で家を選びます。そして犯罪の種類によって、狙い方はまったく違います。
今回は、住宅を狙う犯罪の3つの類型と、犯人がターゲットを選ぶ心理を正しく理解することで、本当に効果的な対策につなげていきます。
1.3つの類型を整理する

警察庁の統計では、住宅への侵入窃盗は主に3種類に分類されています。これを正確に理解することが、対策の第一歩です。
| 種類 | 状況 | 令和6年の件数 |
|---|---|---|
| 空き巣 | 住人が不在のときに侵入 | 11,048件 |
| 忍び込み | 住人が就寝中に侵入 | 3,782件 |
| 居空き | 住人が在宅・起きている隙に侵入 | 792件 |
件数で見ると空き巣が圧倒的に多いですが、忍び込みや居空きは「人がいるのに侵入される」という点で、より危険度が高い犯罪です。
【出典】警察庁「令和6年の犯罪情勢」(2024年版)
住宅を対象とした侵入窃盗の総数:15,622件
2.犯人はどうやってターゲットを選ぶのか

防犯研究の分野では、犯人がターゲットを選ぶときに考える要素を「4つの条件」として整理しています。これはCPTED(防犯環境設計)と呼ばれる考え方にも通じるものです。
【犯人がターゲットに選ぶ4つの条件】
① 入りやすい → 鍵がかかっていない、窓が古い、死角がある
② 見つかりにくい → 人通りが少ない、照明が暗い、塀や植栽で隠れている
③ 逃げやすい → 車を停めやすい、逃走路が複数ある
④ 得がある → 現金・貴金属がありそう、高齢者の一人暮らし
つまり、犯人は「どの家が金持ちか」ではなく「どの家が入りやすくて、バレにくいか」を優先して選んでいます。これは国内外の住宅侵入盗研究で一貫して示されている事実です。
「下見」を必ずしている
空き巣犯の多くは、犯行前に必ず下見をしていることが知られています。複数回にわたって周辺を歩いたり、車でゆっくり通り過ぎたりして、生活リズムや留守の時間帯を確認します。
・郵便受けに郵便物が溜まっている
・夜になっても電気がつかない日が続く
・洗濯物が何日も干しっぱなし
・雨戸が毎日同じ時間に開け閉めされる
これらはすべて「留守がバレるサイン」として犯人に読まれます。また、常時点灯ライトは犯人が光に慣れてしまうため、人の動きに反応するセンサーライトの方が抑止効果は高いとされています。
3.空き巣・忍び込みと「闇バイト型強盗」はまったく別の犯罪

ここが最も重要なポイントです。第1回でも触れましたが、近年急増している「闇バイト型強盗」は、従来の空き巣・忍び込みとは根本的に異なります。
| 比較項目 | 従来の空き巣・忍び込み | 闇バイト型強盗 |
|---|---|---|
| 住人との接触 | 極力避ける | 前提として侵入 |
| ターゲット選定 | 入りやすさ・逃げやすさ | 事前の情報(詐欺未遂など) |
| 人数 | 1〜2人 | 3〜6人の複数犯 |
| 暴力性 | 低い(発覚を嫌う) | 高い(拘束・脅迫が前提) |
| 指示系統 | 自己判断 | 海外から遠隔指示 |
| 実行犯の属性 | 常習犯が多い | SNS募集の使い捨て |
【情報連動型という新しさ】
闇バイト型強盗の最大の特徴は「情報先行」です。特殊詐欺の電話を断っても、「この家には現金がある」という情報が犯罪グループに渡ってしまうことがあります。
詐欺未遂 → 情報が犯罪グループへ → 実行犯が派遣される
このルートで狙われるケースが確認されており、「電話に出ない・話さない」という対策が非常に重要です。
4.CPTED(防犯環境設計)という考え方

防犯の専門家が使う「CPTED(Crime Prevention Through Environmental Design=防犯環境設計)」という考え方があります。環境を整えることで犯罪の機会そのものを減らすという発想です。CPTEDでは、犯人が「嫌がる環境」を次の3つで整理しています。
① 見通しをよくする(自然監視性)

死角をなくし、植栽を低く保ち、照明を適切に配置することで、犯人が「見られている」と感じる環境をつくります。高い生垣や塀は一見プライバシーを守るようで、実は侵入者を隠してしまう逆効果になることがあります。
② 領域性を示す

「ここは管理されている」と示すことで、犯人に「この家は対策されている」と思わせます。フェンス・表札・防犯カメラ・防犯ステッカーなどがこの役割を果たします。
③ 入りにくくする(接近の制御)

補助錠・防犯フィルム・防犯砂利で侵入に時間をかけさせます。これらは特別な工事がなくても、今日から少しずつ取り組める内容です。第6回以降で一つひとつ詳しく解説します。
5.「5分間の壁」が犯人を諦めさせる

警察庁と国土交通省が普及を進める「CP(防犯性能の高い建物部品)」制度では、侵入に5分以上かかると犯人の約7割が諦めるというデータをもとに、製品の基準を設けています。
【5分間の壁をつくるために】
・補助錠を取り付ける(窓・勝手口)
・防犯フィルムをクレセント錠周辺に貼る
・防犯砂利を侵入導線に敷く
・CPマーク対応の錠前・窓サッシに交換する
高額な設備よりも、「入るのに手間がかかる家」という印象を与えることが大切です。
まとめ:犯罪の種類を知ることが最初の一歩

【この記事のまとめ】
□ 空き巣・忍び込み・居空きは「住人不在・就寝・在宅の隙」を狙う窃盗犯
□ 犯人は「入りやすさ・見つかりにくさ・逃げやすさ・得があるか」でターゲットを選ぶ
□ 闇バイト型強盗は「情報先行・複数犯・暴力前提」でまったく別の犯罪
□ CPTED(見通し・領域性・接近制御)で犯人が嫌がる環境を作れる
□ 侵入に5分かかると犯人の約7割が諦める
次回は「ルフィ事件とは何だったのか——事件の全体像・手口・なぜ高齢者宅が狙われたか」をお届けします。あの事件の本当の構造を理解することで、今の対策がより具体的に見えてきます。
参考・引用
※1 警察庁「令和6年の犯罪情勢」(2024年版)
※2 警察庁「住まいる防犯110番」https://www.npa.go.jp/safetylife/seianki/bouhan/
※3 国土交通省・警察庁「防犯性能の高い建物部品」普及推進会議(CP部品制度)
※4 政府広報オンライン 防犯特集(2024年版)


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