第5回・犯罪を知る
闇バイト強盗は今も続いている
―2024〜2025年・首都圏連続事件と地方拡大の現実―

「ルフィが捕まったから、もう大丈夫」——そう思っていませんか?
2023年2月、ルフィ事件の中心人物とされる人物がフィリピンから強制送還・逮捕されました。しかし、その後も同種の犯罪は止まるどころか、拡大し続けています。
今回は、警察庁・警察白書の公式データをもとに、闇バイト型強盗の「今」を正確にお伝えします。
1.逮捕後も強盗は増え続けた
警察庁の犯罪統計を見ると、強盗全体の認知件数は逮捕後も増加基調が続いています。
| 年 | 強盗認知件数 | 前年比 |
|---|---|---|
| 2022年 | 1,148件 | ― |
| 2023年 | 1,361件 | +213件 |
| 2024年 | 1,370件 | +9件 |
| 2025年 | 1,428件 | +58件 |
逮捕があっても数字は下がらない。それは、犯罪の「構造」そのものが残っているからです。指示役一人を捕まえても、実行犯を集めるSNSの仕組みは動き続けます。
【警察庁の分析】
2021年9月から2024年3月までの間に、匿名・流動型犯罪グループによるとみられる広域強盗事件が、22都道府県で78件確認されています。
(警察庁「令和6年の犯罪情勢」より)
2.SNSの犯罪者募集が爆発的に増加

闇バイト型犯罪が止まらない最大の理由は、実行犯の供給源が拡大し続けていることです。
【インターネット・ホットラインセンターの統計】
SNS上の「犯罪実行者募集情報」の分析件数
2023年:4,411件
2024年:13,852件
わずか1年で約3倍超に急増しています。
「高額報酬」「即日即金」「ホワイト案件」などの言葉でSNSに投稿された募集に、経済的に困った若者が応募してしまう。そのサイクルが加速しているのが現実です。
応募したら最後——抜け出せない構造

① SNS・求人サイトで「高額バイト」として募集
② 匿名性の高い通信アプリ(Telegram等)へ誘導
③ 運転免許証など個人情報を送らせる
④ 「やめたら家族に危害を加える」と脅して離脱を封じる
⑤ 使い捨ての実行犯として犯行に駆り出される
応募した時点で、すでに犯罪グループに個人情報を握られている。この構造を知らずに「ちょっと稼げればいい」と応募してしまう若者が後を絶ちません。
3.2024年後半——首都圏で集中発生

2024年8月以降、東京都・埼玉県・千葉県・神奈川県の1都3県で、同種の強盗事件が相次いで発生しました。警察白書は「国民の体感治安が著しく悪化した」と明記しています。
【2024年9月・神奈川県の質店事件(警察白書掲載)】
複数の男が質店に侵入し、店員の目の前でショーケースをバールでたたき割って脅迫。腕時計を強奪し、取り押さえようとした店員に暴行を加えて負傷させた。
捜査の結果、実行犯はSNS上の募集に応募し、匿名通信アプリで指示を受けていたことが判明。同年11月までに4人が強盗致傷罪等で逮捕。
この事態を受け、2024年10月に警視庁を中心とする1都3県の合同捜査本部が設置されました。2025年4月末までに48人が検挙されています。
また2024年12月には、政府が「緊急対策」を取りまとめました。SNS上の闇バイト募集広告の削除要請・個別警告など、デジタル空間での取り締まりが強化されています。
4.地方への拡大——「首都圏だけの話」ではない

闇バイト型強盗は、首都圏だけの問題ではありません。警察庁の統計が示すように、すでに22都道府県で発生しており、地方への拡大が続いています。
【2026年2月・千葉県での事例】
野田市(2月25日未明):80代夫婦宅に男3人組が侵入。手足を縛り、金庫を奪って逃走。
君津市(2月2日未明):78歳男性をテープで縛り、スタンガンで脅迫。金庫を奪って逃走。
いずれも深夜・高齢者宅・複数犯・拘束という、首都圏の連続事件と共通するパターンです。
地方の一戸建てだからといって、安心はできません。むしろ、防犯設備が整っていない地方の高齢者宅は、犯罪グループにとって「狙いやすい標的」になりうるのです。
5.恐れすぎず、正確に知る

ここで大切なことをお伝えします。これだけ深刻な状況をお伝えしましたが、闇バイト型強盗は「全国どこでも毎日起きている」犯罪ではありません。
【正確な現状認識のために】
・2024年の強盗認知件数は全国で1,370件(うち住宅が標的のものはさらに限定的)
・都道府県別に見ると、東京・神奈川・大阪などの大都市圏に集中している
・「闇バイト型」の凶悪強盗は全強盗の中でも特定のパターンに絞られる
怖がりすぎず、しかし「知らない」ままでいないこと。それが最大の防犯です。
まとめ:今日からできること

【今日の確認チェック】
□ 家族・身内に「闇バイトの危険性」を伝えましたか?(応募させないことも大切な防犯)
□ SNSで「高額バイト」「即日即金」などの言葉に反応していませんか?
□ 玄関のドアは、呼んでいない訪問者には開けない習慣がありますか?
□ 深夜・就寝時の1階の施錠は確認していますか?
□ 近所で不審な車・人物を見かけたら、#9110または110番に通報する習慣がありますか?
次回からは、「侵入させない対策」の具体的な方法を一つひとつ丁寧に解説していきます。第6回は「外構・塀・照明の見直し方——死角をなくし、犯人が嫌がる家を作る」です。
参考・引用
※1 警察庁「令和6年の犯罪情勢」(2024年版)
※2 警察白書(2025年版)
※3 インターネット・ホットラインセンター統計(2024年)
※4 首相官邸 犯罪対策閣僚会議「緊急対策」(2024年12月)
※5 警察庁「住まいる防犯110番」https://www.npa.go.jp/safetylife/seianki/bouhan/


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