第1回・犯罪を知る
なぜ今、一戸建てが狙われるのか
―闇バイト型強盗と従来の空き巣は「別の犯罪」だ―

「うちは普通の家だから大丈夫」「田舎だから狙われない」——そう思っていませんか?
実は今、日本の住宅犯罪は大きな転換点を迎えています。従来の空き巣と、近年急増している「闇バイト型強盗」は、まったく別の犯罪です。この違いを正しく知ることが、家族を守る第一歩になります。
1.住宅犯罪の「今」を正確に知る

警察庁の令和6年(2024年)の犯罪統計によると、住宅を対象とした侵入窃盗の総数は15,622件でした。毎日40件以上、どこかの住宅が被害に遭っている計算です。
【令和6年・住宅侵入犯罪の内訳】
・空き巣(不在時):11,048件 ※最多
・忍び込み(就寝中):3,782件 ※住人が寝ている間に侵入
・居空き(在宅時):792件 ※起きている隙を狙う
(警察庁「令和6年の犯罪情勢」より)
件数だけ見ると「昔より減っている」と感じる方もいるかもしれません。しかし件数の減少とは別に、犯罪の「質」が変化しています。近年急増しているのが、暴力を伴う「侵入強盗」です。
2.「空き巣」と「闇バイト型強盗」はまったく別の犯罪

従来の空き巣犯と、近年の闇バイト型強盗は、目的も手口も組織構造もまったく異なります。
| 比較項目 | 従来の空き巣 | 闇バイト型強盗 |
|---|---|---|
| 住人との接触 | 極力避ける | 在宅でも侵入する |
| 暴力性 | 低い | 高い(拘束・脅迫が前提) |
| 人数 | 1〜2人 | 3〜6人の複数犯 |
| 指示系統 | 自己判断 | 海外から遠隔指示 |
| 実行犯 | 常習犯が多い | SNS募集の使い捨て |
| ターゲット選定 | 入りやすい家 | 情報に基づいて選定 |
最も重要な違いは「人がいても侵入する」という点です。従来の空き巣は住人との接触を嫌い、留守を確認してから侵入します。しかし闇バイト型強盗は、在宅中であっても押し入り、暴力で制圧します。
3.なぜ「情報」が命取りになるのか

闇バイト型強盗の最大の特徴は「情報先行」です。犯罪グループはターゲットを無作為に選んでいるのではなく、事前に収集した情報をもとに標的を絞り込んでいます。
【情報が犯罪につながる仕組み】
① 特殊詐欺の電話をかける(「現金がある」「一人暮らし」などの情報を収集)
② 断られても「この家には現金がある」という情報が犯罪グループに残る
③ その情報をもとに実行犯が派遣される
詐欺の電話を「断った」だけでは安心できません。電話口で資産情報・家族構成・生活状況を話してしまった場合、それ自体がターゲットになるリスクを高めます。
4.なぜ一戸建ての中高年が狙われるのか

犯罪グループが一戸建てに住む中高年世帯を狙う理由は明確です。
【狙われやすい4つの理由】
① 現金を自宅に置いている傾向がある
→ 高齢世代は銀行よりも自宅保管を好む傾向がある
② 物理的に抵抗しにくい
→ 複数の若い実行犯に対して高齢者は対抗が難しい
③ 一戸建ては逃走しやすい
→ マンションと違い、玄関から直接外に出られる
④ 防犯設備が手薄なことが多い
→ 「田舎だから」「昔から住んでいるから」という油断
5.防犯は「知ること」から始まる

ここまで読んで、「怖い」と感じた方もいるかもしれません。しかし大切なのは、恐れすぎず、正確に知ることです。
闇バイト型強盗は毎日どこでも起きている犯罪ではありません。ただし、「自分には関係ない」と思っていると、対策が後手に回ります。
犯罪の仕組みを正しく理解することで、本当に効果的な対策が見えてきます。次回からは、具体的な対策を一つひとつ解説していきます。
【防犯の基本3原則】
① 知る → 犯罪の仕組みと手口を正確に理解する
② 備える → 家の弱点を把握して対策を講じる
③ つながる → 家族・近所・警察との連携を作る
この3つが揃って初めて、本当の意味での「守る家」になります。
まとめ:今日からできること

【今日の確認チェック】
□ 家族で「不審な電話がきたときの対応」を話し合いましたか?
□ 電話口で現金・資産・家族構成などを話していませんか?
□ 警察の相談窓口「#9110」を家族全員が知っていますか?
□ 家の外周を歩いて「死角」になる場所を確認しましたか?
次回は「プロが診た『守れていない家』の実態——大手警備会社と契約済みの豪邸でも侵入される理由」をお届けします。実際の現場診断事例から、見落とされがちな弱点を解説します。
参考・引用
※1 警察庁「令和6年の犯罪情勢」(2024年版)
※2 警察庁「住まいる防犯110番」https://www.npa.go.jp/safetylife/seianki/bouhan/
※3 首相官邸 犯罪対策閣僚会議関連資料
※4 警察白書(2025年版)

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